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凍結・保存に関する見解

倫理に関する見解

医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)および卵巣組織の凍結・保存に関する見解

会  告

学会会員殿

   本会倫理委員会は、「医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する見解」(平成26年4月)に、胚の凍結・保存を含めた上で、通常の生殖医療とは異なる留意点があるため、平成27年度より綿密な協議を重ねてまいりました。各界の意見を十分に聴取しました結果、改定案をとりまとめ、機関誌68巻4号に掲載し、会員の意見を聴取した上で、理事会に答申致しました。理事会(第1回理事会・平成28年6月4日)ならびに総会(平成28年6月25日)はこれを承認しましたので、会告の改定としてここに会員にお知らせ致します。

平成28年6月

公益社団法人 日本産科婦人科学会
理事長 藤井 知行
倫理委員会委員長 苛原  稔
_______________________________

   日本産科婦人科学会(以下、本会)倫理委員会は、悪性腫瘍など(以下、原疾患)の治療により、医学的にみて卵巣機能が低下すると予想される場合に、未受精卵子の採取・凍結・保存(以下、本法)を実施する必要性を認め、その際に本会会員が順守すべき事項を見解として示してきました。結婚している女性が本法を希望する場合は、これまでも本会が示す「体外受精・胚移植に関する見解」、「顕微授精に関する見解」、および「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解」に準拠し、胚(受精卵、以下胚という)の状態での凍結保存が行われてきたと考えられます。しかしながら、医学的適応に基づいて胚の凍結・保存を開始する場合は、通常の生殖医療として行われる胚凍結とは異なる留意点があるため、今回、本会会員が順守すべき事項を下記のように見解として公表いたします。
   本法が医学的、倫理的、社会的に定着することを期待するとともに、本会会員においては本見解の目的を正しく理解し、かつ、一般社会や他の医療従事者に対して正しく目的と医療の内容を啓発していただきますようお願いいたします。
   なお、既に、医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する登録が受理されている施設については、本見解施行細則に基づいて再登録をお願いします。

平成28年6月
公益社団法人 日本産科婦人科学会
理事長 藤井 知行
倫理委員会委員長 苛原  稔
_______________________________

医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)および卵巣組織の
凍結・保存に関する見解

   悪性腫瘍など(以下、原疾患)に罹患した女性に対し、その原疾患治療を目的として外科的療法、化学療法、放射線療法などを行うことにより、その女性が妊娠・出産を経験する前に卵巣機能が低下し、その結果、妊孕性が失われると予測される場合、妊孕性を温存する方法として、女性本人の意思に基づき、未受精卵子または胚・受精卵(以下胚という)を凍結・保存すること(以下、本法)が考えられる。本法は、原疾患治療で発生する副作用対策の一環としての医療行為と考えられるので、治療を受ける時期に挙児希望がない場合でも、本人が希望する場合には医療行為として認める必要がある。
   しかし、本法の実施が原疾患の予後に及ぼす影響、保存された卵子、胚により将来において被実施者が妊娠する可能性と妊娠した場合の安全性など、未だ明らかでないことも多いため、被実施者に十分な情報提供を行い、被実施者自身が自己決定することが重要である。
   本法は体外受精・胚移植、顕微授精や卵子または胚の凍結保存を実施することを前提としており、日本産科婦人科学会(以下、本会)の「体外受精・胚移植に関する見解」、「顕微授精に関する見解」および「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解」に準拠して実施されなければならない。さらに本法は通常の生殖補助医療(ART)とは異なる医学的、倫理的、社会的な問題を包含しているため、以下の点に留意して行われることを要す。

(対象)
1. 本法は、原疾患の治療により卵巣機能の低下が予想され、本法を施行することが被実施者の妊孕性温存と原疾患の治療の実施に著しい不利益とならないと判断されるものを対象とする。
2. 本法の実施にあたっては、原疾患の状態、予後など、本法を行うことが原疾患治療に及ぼす影響を把握するため、原疾患主治医から文書による適切な情報提供がなされていることを要す。
3. 本法の実施にあたっては、原疾患主治医と生殖医療担当医が、情報を共有しながら、以下の必要事項について文書を用いて被実施者(被実施者の意思確認が困難な場合は代諾者)に説明することを要す。
(1)原疾患の治療と卵巣機能の低下の関連性
(2)原疾患の状態、予後
(3)本法の実施が原疾患の予後に影響を及ぼす可能性
(4)本法の詳細
(5)凍結保存された未受精卵子または胚を用いたARTの詳細
(6)凍結保存された未受精卵子または胚により将来、被実施者が妊娠する可能性と妊娠した場合の安全性
(7)凍結された未受精卵子または胚の保存期間と許容された保存期間を過ぎた場合の取り扱い
(8)費用、その他
4. 本法を希望する者が成人の場合には、本人から文書による同意を取得し実施する。胚の凍結を希望する場合には、被実施者夫婦から文書による同意を取得し実施する。本法を希望する者が未成年者の場合には、本人および代諾者の文書による同意を得て実施するが、被実施者が成人に達した時点で、本人の凍結保存継続の意思を確認し、改めて本人から文書による同意を取得する。

(実施施設)
5. 本法を実施するART施設は、本会に登録されたART実施登録施設(以下、ART登録施設)であり、かつ、本法の実施について倫理委員会において審査を受けていることを要す。
6. 本法は、原疾患治療施設内にあるART登録施設で行われるのが望ましいが、原疾患治療施設内にART登録施設がない場合には、原疾患治療施設と連携できる他のART登録施設が行ってもよい。
7. 本法を実施するART登録施設には日本生殖医学会が認める生殖医療専門医が常勤していることが望ましい。

(卵子・胚の保存)
8. 凍結されている未受精卵子はその卵子の由来する被実施者に帰属するものであり、その被実施者は当該ART登録施設に対し、凍結未受精卵子の保管を委託する。また、凍結されている胚はそれを構成する両配偶子の由来する被実施者夫婦に帰属するものであり、被実施者夫婦は当該ART登録施設に対し、胚の保管を委託する。
9. 未受精卵子の保存期間中、当該ART登録施設は、定期的に、被実施者(被実施者が未成年の場合は被実施者と代諾者の両者、被実施者の意思確認が困難な場合は代諾者)に対して未受精卵子の保存を継続する意思の有無を確認することを要す。また、胚を凍結保存期間中は、当該ART登録施設は、定期的に、被実施者夫婦に対して胚の保存を継続する意思の有無を確認することを要す。
10. 保存された未受精卵子、胚は、以下のいずれかの場合に廃棄される。(1)被実施者(胚の場合は、被実施者夫婦のいずれか)から廃棄の意思が表明された場合。(2)被実施者が生殖年齢を超えた場合。(3)被実施者(胚の場合は、被実施者夫婦のいずれか)が死亡した場合。
11. 凍結された胚の保存期間は、被実施者夫婦が夫婦として継続している期間であって、かつ卵子を採取した女性の生殖年齢を超えないこととする。
12. 当該ART登録施設で卵子または胚の保存を継続できない場合、当該ART登録施設は被実施者(胚の場合は、被実施者夫婦双方)に通知し、被実施者の同意を得たうえで、改めて原疾患治療施設と連携して、他のART登録施設での卵子保存の継続を検討する。

(ARTでの使用)
13. 保存された未受精卵子または胚をARTに使用する場合には、改めて原疾患主治医から文書による適切な情報提供を得るとともに、本会会告「体外受精・胚移植に関する見解」、「顕微授精に関する見解」、および「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解」に準拠して行うことを要す。
14. 凍結融解後の卵子から得られた胚、または凍結融解後の胚は、卵子採取を受けた被実施者のみに移植されるものであり、ART登録施設は移植ごとに被実施者夫婦から文書による同意を取得し、同意文書を保管する。
15. 未受精卵子あるいは胚の保存施設と、未受精卵子あるいは胚を用いてARTを実施する施設は同一であることを原則とする。なお、ART実施施設を変更する場合には、改めて原疾患治療施設と連携して、被実施者の同意を得てこれを行う。その際のART実施施設は、ART登録施設であることを要す。

(その他)
16. 凍結保存された未受精卵子、胚の売買は認めない。
17. 凍結保存された未受精卵子、胚の譲渡は認めない。ただし、18項に規定された場合を除く。
18. 凍結保存後、被実施者(胚の場合は被実施者夫婦双方)から廃棄の意思が表明された凍結卵子または胚を生殖医学の発展に資する研究に利用する場合は、本会会告「ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する見解」および関連する法律や国・省庁ガイドラインに沿い、必要な手続きを改めて施行しなければならない。
19. 本会会員が本法を行うにあたっては、所定の様式に従って本会に登録、報告しなければならない。本会への申請にあたっては、未受精卵子、胚、卵巣組織のうち、凍結保存の対象とするものを明確に示すことを要す。

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医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)および卵巣組織の
凍結・保存に関する見解の細則

1.医学的適応による卵巣組織の凍結・保存は、未受精卵子、胚の場合と同じく、基本的に本法に含まれる医療行為と考えられ、卵巣組織の凍結・保存を実施する生殖補助医療実施機関は、本見解に加えて、卵巣組織の採取などに関わる要件が必要となる。
2.通常の生殖医療を実施している生殖補助医療実施医療機関が、不妊治療としての胚凍結のほかに医学的適応による胚の凍結保存を行う場合は、本法に関する登録申請を行わなければならない。
3.本見解改定後から平成28年12月末までを移行期間とし、この期間内に本法の登録を行っていない生殖補助医療実施医療機関において、医学的適応による未受精卵子、胚および卵巣組織の凍結・保存を必要とする症例が発生した場合には、本見解に基づき本法を実施するとともに、実施後速やかに登録申請(施設、症例)を行わなければならない。
4.通常の生殖補助医療治療中の症例に悪性疾患が見つかり、悪性疾患の治療前後に凍結融解胚移植を行う場合は、本見解の対象となる生殖補助医療とは見なされないが、通常の生殖医療を実施している生殖補助医療実施医療機関においても、本見解に準拠した必要事項などを文書により説明することが望ましい。
5.既に「医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する登録」を行っている施設は、胚についても医学的適応の下に凍結・保存を行う旨、本会へ申告することを要する。
6.施設の登録状況は平成29年1月以降、順次本会ホームページ上に公開する。

(平成26年4月 施行、理事長 小西 郁生、倫理委員長 苛原 稔)
(平成28年6月 改定、理事長 藤井 知行、倫理委員長 苛原 稔)

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