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倫理に関する見解

着床前診断に関する見解

「着床前診断」に関する見解

「着床前診断」に関する見解の改定について

 「着床前診断」に関する見解につき、平成22年6月26日開催日本産科婦人科学会総会において、下記の通り改定されることが承認されましたので会員の皆様にお知らせします。

平成22年6月26日

社団法人 日本産科婦人科学会

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(社)日本産科婦人科学会会告(改定)


「着床前診断」に関する見解

受精卵(胚)の着床前診断に対し、ヒトの体外受精・胚移植技術の適用を認め、実施にあたり遵守すべき条件を以下に定める。

1.位置づけ
着床前診断(以下本法)は極めて高度な技術を要する医療行為であり、臨床研究として行われる。

2.実施者
本法の実施者は、生殖医学に関する高度の知識・技術を習得した医師であり、かつ遺伝性疾患に対して深い知識と出生前診断の豊かな経験を有していることを必要とする。また、遺伝子・染色体診断の技術に関する業績を有することを要する。

3.施設要件
本法を実施する医療機関は、すでに体外受精・胚移植による分娩例を有し、かつ出生前診断に関して実績を有することを必要とする。実施しようとする施設は、所定の様式にしたがって施設認可申請を行い、本会における審査を経て許可を得なければならない。

4.適応と審査対象および実施要件
   1) 適応の可否は日本産科婦人科学会(以下本会)において申請された事例ごとに審査される。本法は、原則として重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある、遺伝子変異ならびに染色体異常を保因する場合に限り適用される。但し、重篤な遺伝性疾患に加え、均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣流産(反復流産を含む)も対象とする*。
   2) 本法の実施にあたっては、所定の様式に従って本会に申請し、許可を得なければならない。なお、申請にあたっては、会員が所属する医療機関の倫理委員会にて許可されていることを前提とする。
   3) 本法の実施は、強い希望がありかつ夫婦間で合意が得られた場合に限り認めるものとする。本法の実施にあたっては、実施者は実施前に当該夫婦に対して、本法の原理・手法、予想される成績、安全性、従来の出生前診断との異同、などを文書にて説明の上、患者の自己決定権を尊重し、文書にて同意(インフォームドコンセント)を得、これを保管する。また、被実施者夫婦およびその出生児のプライバシーを厳重に守ることとする。
   4) 診断する遺伝学的情報(遺伝子・染色体)の詳細および診断法については審査対象とする。診断精度を含めクライエントに対しては、十分なカウンセリングを行う。

5.診断情報および遺伝子情報の管理
診断する遺伝情報は、疾患の発症に関わる遺伝子・染色体の遺伝学的情報に限られ、スクリーニングを目的としない。目的以外の診断情報については原則として解析または開示しない。また、遺伝情報は最も重大な個人情報であり、その管理に関してはいわゆる厚生労働省・文部科学省・経済産業省による三省ガイドラインおよび遺伝関連医学会によるガイドラインに基づき、厳重な管理が要求される。

6.遺伝カウンセリング
本法は遺伝情報を取り扱う遺伝医療に位置づけられるため、十分な専門的遺伝カウンセリングが必要である。ここでいう遺伝カウンセリングとは、4項3)および4)に述べる実施診療部門内における説明・カウンセリングとは異なり、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー等の遺伝医療の専門家が、客観的な立場から遺伝カウンセリングを行い、医学的理解、クライエントの意識の確認などを行う。遺伝カウンセリングは、着床前診断実施者が所属する診療部門以外の第三者機関もしくは診療部門において、実施者以外の臨床遺伝専門医または認定遺伝カウンセラー等の遺伝医療の専門家がこれを行う。

7.報告
本法はなお臨床研究の範囲にあり、診断精度・児の予後などを含め研究成果を集積、検討することが望まれる。実施状況とその結果について毎年定期的に本会へ報告する。

8.倫理審査および申請手続き
実施にあたっては、本会への倫理審査申請と承認が必要である。実施しようとする施設は施設認可申請を行い許可を得た後、申請された事例ごとに着床前診断症例認可申請を行い、本学会の倫理委員会の下に設けられた審査小委員会で審査される。

9.見解等の見直し
本会は、着床前診断に関する本会の見解や資格要件、手続きなどを定期的(3~5年毎)に見直し、技術的進歩や社会的ニーズを適切に反映していくことに努める。

*習慣流産に対する着床前診断についての考え方
   本邦における着床前診断(以下本法)は、平成10年に本会見解が示されて以来、重篤な遺伝性疾患に限って適用されてきた。しかし、生殖補助医療技術の進歩、社会的な要請の出現に伴い、染色体転座に起因する習慣流産に対する本法の適用が検討され、慎重な議論の末、平成18年に「染色体転座に起因する習慣流産(反復流産を含む)を着床前診断の審査の対象とする。」という見解を発表した。これは、流産の反復による身体的・精神的苦痛の回避を強く望む心情や、流産を回避する手段の選択肢のひとつとして本法を利用したいと願う心情に配慮したものであり、平成10年見解における審査対象「重篤な遺伝性疾患」に新たな枠組みを設けるものであった。
   染色体転座に起因する習慣流産では自然妊娠による生児獲得も期待できることが多く、十分な遺伝カウンセリングのもとに、その適応は症例ごとに慎重に審査し決定されるべきである。

平成22年6月改定

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着床前診断の実施に関する細則

1.申請方法
1)施設認可申請
着床前診断の実施を希望する施設は、下記の申請書類を日本産科婦人科学会理事長宛に送付する。
   (1)着床前診断に関する臨床研究施設認可申請書(様式1)

      ①施設の出生前診断に関する実施状況
      ②体外受精・胚移植に関する実施状況
      ③遺伝子診断、染色体分析技術に関する業績
   (2)実施責任者・実施者(複数の場合は全員)の履歴書
   (3)申請施設の遺伝子・染色体診断に関する論文別冊および学会発表の抄録のコピー
*上記の内容に変更が生じた場合は速やかに本会に報告する。
   (4)当該施設内における遺伝カウンセリング体制、内容および担当者の実績(資格、履歴など含む)報告書
2)着床前診断症例認可申請
着床前診断の実施にあたり、下記の申請書類を日本産科婦人科学会理事長宛に送付する。申請は診断する症例ごとに行う。なお、用いる診断方法をすべて記載する。
   (1)着床前診断に関する臨床研究個別症例申請書(申請書の様式は定めないが、以下の内容を含むものとする)
      ①着床前診断を行う疾患名(遺伝子変異、染色体核型など)
      ②症例の概要(妊娠歴、流産歴、分娩歴、夫婦および家族歴(遺伝家系図)、着床前診断を希望するに至った経緯、遺伝性疾患においては生まれてくる児の重篤性を示す臨床症状もしくは検査結果、習慣流産においては夫婦の核型、流産児(絨毛)の染色体分析結果、習慣流産関連の諸検査成績など)
      ③遺伝子変異、染色体異常の診断法
      ④着床前診断実施者が所属する診療部門以外の第三者機関もしくは診療部門における遺伝カウンセリングの内容および担当者の実績(資格、履歴など含む)
   (2)申請施設内倫理委員会の許可証のコピー
   (3)着床前診断症例認可申請チェックリスト(様式2)

2.審査小委員会
1)本小委員会は、原則として本会理事または倫理委員、および理事長が委嘱する着床前診断に豊富な知識を有する専門家をもって構成され、施設認定に関する審査、個々の申請事例についての適応可否に関する審査等を行う。委員は合計5名とする。委員の再任は妨げない。
2)委員長は委員の互選により選出される。
3)委員会は本会倫理委員長の諮問あるいは必要に応じて小委員会委員長が召集する。
4)委員会の職責遂行を補佐するため幹事若干名が陪席する。

3.施設および事例の認定
1)審査小委員会は申請内容を書類にて審議し、必要に応じて調査を行う。
2)審査小委員長は申請審議内容を倫理委員会に報告し、理事会は認定の可否を決定する。
3)認定は疾患および診断方法について行い、申請者に通知する(様式3)

4.実施報告義務
1)本件に関わる報告対象期間は毎年4月1日から翌年3月31日までとする。
2)実施施設は、前年度の報告を毎年6月末日までに個々の実施報告書(様式4)、実施報告のまとめ(様式5)を倫理委員長宛に送付する。
3)当該年度に実施例がない場合でも、実施報告のまとめは送付する。
4)倫理委員会は報告書を審議し、その結果を理事会に報告する。

5.見解の遵守
1)倫理委員会は認定施設および実施者が見解を遵守しているかを検討し、違反した場合にはその旨理事会に報告する。
2)理事会は見解に違反した施設および会員に対して本会見解の遵守に関する取り決めに従って適切な指導・処分を行う。

6.臨床研究の評価
1)倫理委員会は本臨床研究の有用性を当面2年ごとに再評価する。

 

平成23年2月26日改定
社団法人 日本産科婦人科学会
理事長  吉村泰典
倫理委員会委員長  嘉村敏治

(様式1)

(様式2)
(様式3)
(様式4)
(様式5)
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