日本産科婦人科学会専門医制度卒後研修目標
はじめに
この研修目標は卒後研修到達目標検討委員会で作成したもので、その内容としては専門医制度下で卒後5年間の産婦人科研修を行う際の目標として望まれる項目とレベルが示されている。
しかしながら、産婦人科臨床においては、この研修目標に示された項目のほかにも産婦人科医として必要なものがあり、また日進月歩のレベルを保持するためにも、専門医の資格取得後、本研修目標をこえてさらに生涯研修に努めることが望まれる。
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(注)
| ここで用いられている基本的な用語について解説する。 | ||||
| 1. | 一般目標(General Instructional Objectives;GIO) | |||
| 研修者を主語として、何のために、どんなことができるようになるかを述べ、産婦人科専門医としてどのような知識・技能・態度を身につけるべきかを包括的に示している。 | ||||
| 2. | 行動目標(Specific Behavioral Objectives;SBO) | |||
| 一般目標に到達するためにはどうすればよいかを具体的に示したもので、現実的、行動的な言葉で表現されている。 また各論では、教育目標分類学の3領域、すなわち認知領域、精神運動領域、情意領域が、それぞれ知識、技能、態度として示されている。 |
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| これらの凡例を挙げると、 | ||||
| 1) | 知識 | |||
| a. | 基本的な知識を有し、具体的に述べることができる。 | |||
| b. | 個々の患者のリスクについて説明することができる。 | |||
| c. | 個々の病態を理解し、それぞれの特徴を列記することができる。 | |||
| 2) | 技能 | |||
| a. | 自ら検査を実施し、その結果を評価することができる。 | |||
| b. | 検査の実施を指示し、結果を評価することができる。 | |||
| c. | 検査レポートの内容を理解し、診断に応用することができる。 | |||
| d. | リスクの評価を自ら行い、必要な治療、措置を講じることができる。 | |||
| e. | 適切な保健指導を行うことができる。 | |||
| 3) | 態度 | |||
| a. | 個人的、社会的配慮を示す。 | |||
| b. | 暖かい心をもって全人的に対応する。 | |||
改訂にあたって
平成16年度より新医師卒後臨床研修制度が開始されるにあたり、専門医制度卒後研修目標の内容を更新すると共に、卒後研修5年間のうち初期2年間の卒後研修における研修目標を明示した。初期2年間のうち、産婦人科研修中に習得すべき項目を緑で、他科研修中に習得すべき項目を青で、3年目以降で研修する項目を茶で示した。これらの複数の要素が混在している場合には、その見出し語、説明文を黒で示した。
** 目 次 **
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| I. | 総 論 | |
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| II. | 婦人科腫瘍 | |
| 1. 腫瘍 2. 病理 3. 手術 4. 放射線療法 5. 化学療法 | ||
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| III. | 生殖内分泌 | |
| 1.内分泌 2. 不妊症 3. 不育症 | ||
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| IV. | 産科・周産期 | |
| 1)知識 2)技能 3)態度 | ||
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| V. | 女性のヘルスケア | |
| 1. 感染症 2. 心身症 3. 更年期障害 | ||
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| VI. | 母性衛生と法規 | |
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I. 総論
(一般目標)
| (1) | すべての医師に必須な各領域にわたる基本的な診療能力を身につける。 | |
| (2) | チーム医療の必要性を理解し、リーダーとしての能力を身につける。 | |
| (3) | 医師として常に新しい医学、医療の進歩を患者にフィードバックする生涯研修の態度を身につける。 | |
| (4) | 医師として地域保健医療の重要性を理解し、病診連携を含め、地域保健医療関係者と協力する習慣を身につける。 | |
| (5) | 産科婦人科の患者の特性を理解し、暖かい心を持ってその診療にあたる態度を身につける。 | |
| (6) | 産科婦人科患者を診察し、適切な診断、治療を行うと共に、各疾患の予防的な方策も指示できる臨床能力を身につける。 | |
| (7) | あらゆる年代の女性の、すべての健康問題に関心を持ち、管理できる能力を身につける。 | |
| (8) | 患者の生活の質を向上するために心身の回復を助けるよう努力する習慣を身につける。 | |
| (9) | 患者ならびに医療従事者にとって、安全な医療を遂行するために、安全管理の方策を身につけ、危機管理に参画できる。 | |
| (10) | EBM(evidence based medicine)を理解し、実践する方法を習得する。 |
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(行動目標)
| (1) | 初期診療能力 | ||||
| a. | 患者に対して不安感を与えることなく的確に情報を訊き出し、問題を整理することができる。 | ||||
| b. | 患者のもつ問題を単に身体的なものだけでなく、心理的、社会的、倫理的側面まで包含して、全人的にとらえることができる。 | ||||
| c. | 得られた情報をもとにして、診断および初期診療のための問題解決に向けて計画を立てることができる。 | ||||
| d. | 立てた計画に従って、下記の基本的診療能力を用いた診療を実施することができる。 | ||||
| e. | 診療実践の結果および患者の状況変化を評価し、よりよい計画を立てて実施することができる。 | ||||
| f. | 日常よく遭遇する疾病について適正な対処を行い、かつ重篤な疾患の初期症状との鑑別ができる。 | ||||
| g. | 医療チームのメンバーに対して診療上の適切な協力体制を構築もしくは指示をすることができる。 | ||||
| (2) | 救急患者のプライマリケア | ||||
| a. | バイタルサインを正確に把握し、生命維持に必要な処置を行うことができる(特にショック患者の救急処置、管理としては、気道確保、気管内挿管、人工呼吸、閉胸心マッサージ、除細動が含まれる)。 | ||||
| b. | 初期治療を経験しながら適切な専門医に連絡、コンサルテーションする。 | ||||
| (注) | 上記の初期診療能力が求められる救急の範囲としては、以下のものが挙げられる。 意識障害、脳血管障害、心筋梗塞・急性心不全、急性呼吸不全、急性腎不全・尿閉、急性重症感染症、急性中毒症、急性腹症、急性出血性疾患、各種外傷創傷(四肢、頭部、脊椎・脊髄、胸部、腹部その他)、熱傷、小児救急(発熱、発疹、下痢、嘔吐、腹痛、咳、呼吸困難、痙攣、異物事故、薬物誤飲および新生児救急を含む) |
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| (3) | 基本的診療能力 | ||||
| a. | 診療に必要な基本的態度・技能を身につける。 | ||||
| -1- | 医師として患者に接するマナー | ||||
| -2- | 全身の系統的な診察およびその記録 | ||||
| -3- | 主たる所見の的確な把握と記載 | ||||
| b. | 基本的臨床検査法を実施あるいは依頼し、結果を解釈して患者・家族にわかりやすく説明できる。 検尿、尿妊娠反応、検便、血算、出血・凝固時間、血液型検査、血液交差試験、血糖簡便検査、血清生化学血清免疫学、細菌学的検査、細胞診、組織診、髄液検査、肝・腎・肺機能検査、内分泌機能検査、心電図、超音波検査、脳波検査、各種内視鏡検査、各部位のX線撮影、CT、MRI、RI検査など |
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| c. | 基本的治療 | ||||
| -1- | 臨床検査または治療のための各種採血法(静脈血、動脈血)、採尿法(導尿を含む)、注射法(皮内・皮下・筋肉・静脈注射・点滴、静脈確保法)、穿刺法(腰椎、胸腔・腹腔穿刺)の適応を決定し、実施できる。 | ||||
| -2- | 基本的な内科的治療法(輸血・輸液法、一般的な薬剤の処方・与薬法、食事療法、運動療法の基本などを含む)の適応を決定し、実施できる。 | ||||
| -3- | 基本的な外科的治療法 | ||||
| (4) | 剖検への参加:死後の法的処置ができ、剖検について家族の諒解を得て、積極的に剖検に参加する。 | ||||
| (5) | 医師としての基本姿勢 | ||||
| a. | 診療の内容について、患者・家族に十分に説明したうえで、インフォームド・コンセント(説明と同意)が得られる説明能力を身につける。 | ||||
| b. | 患者・家族に対して総合的かつ全人的に対応し、信頼関係を確立することができる。 | ||||
| c. | チーム医療における他の医師および医療メンバーと協調的に活動することができる。 | ||||
| d. | 健康保険制度を理解し、保険医療に従事する限り、その範囲内で適切な医療を行うことができる。 | ||||
| e. | 各種の医療補助制度を十分理解し、それを必要とする患者・家族に適切なアドバイスができる(例えば、育成医療、小児慢性疾患、難病、身体障害者福祉、医療補助、生活保護など)。 | ||||
| f. | 医薬品の副作用に注意し、もし副作用と思われる症状が発現した場合には適切に対応して副作用報告を出し、患者の副作用救済制度の利用を助言できる。 | ||||
| g. | 医学・医療の進歩に遅れないように常に自己学習する。 | ||||
| h. | 主たる医療法規を理解し、遵守する。 | ||||
| i. | 他の医療機関の医師との間で、助言・紹介などの連携を保つことができる。 | ||||
| j. | 疾患の診断、治療のみならず、健康の維持、増進、疾病の予防、リハビリテーション、社会復帰、ターミナルケアに至るまで、包括的にとらえ、実施するよう努力する。 | ||||
| k. | 医療現場での安全確認を実施でき、さらに医療事故防止および事故後の対処についてマニュアルに沿って行動できる。 | ||||
| (6) | 産婦人科的診療能力 | ||||
| a. | 医療面接(問診)および病歴の記載 | ||||
| 患者との間に良いコミュニケーションを保って医療面接(問診)を行い、総合的かつ全人的にpatient profileをとらえることができる。病歴の記載は、問題解決志向型病歴(Problem Oriented Medical Record; POMR)をつくるように工夫する。 | |||||
| -1- | 主訴 | ||||
| -2- | 現病歴 | ||||
| -3- | 月経歴 | ||||
| -4- | 結婚、妊娠、分娩歴 | ||||
| -5- | 家族歴 | ||||
| -6- | 既往歴 | ||||
| b. | 産婦人科診察法 | ||||
| 産婦人科診療に必要な基本的態度・技能を身につける。 | |||||
| -1- | 視診(一般的視診および腟鏡診) | ||||
| -2- | 触診(外診、内診、直腸診など) | ||||
| -3- | 穿刺診(Douglas窩穿刺、腹腔穿刺その他) | ||||
| -4- | 新生児の診察(Apgarスコア、Silvermanスコアその他) | ||||
| c. | 臨床検査法 | ||||
| 産婦人科診療に必要な種々の検査を実施あるいは依頼し、その結果を評価して、患者・家族にわかりやすく説明することができる。 | |||||
| -1- | 婦人科内分泌検査 | ||||
| 基礎体温測定、腟細胞診、頸管粘液検査、ホルモン負荷テスト、各種ホルモン測定、子宮内膜検査、性染色体検査 | |||||
| -2- | 不妊(症)検査 | ||||
| 基礎体温測定、卵管疎通性検査(通気、通水、通色素、子宮卵管造影) 精子頸管粘液適合試験(Huhnerテスト、Miller- Kurzrokテスト)、精液検査、子宮鏡、腹腔鏡、子宮内膜検査、月経血培養 |
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| -3- | 癌の検査 | ||||
| 細胞診、コルポスコピー、Schillerテスト、組織診、子宮鏡、RI検査、CT、MRI、腫瘍マーカー | |||||
| -4- | 絨毛性疾患検査 | ||||
| 基礎体温測定、ホルモン測定(絨毛性ゴナドトロピンその他)、胸部X線検査、超音波診断、骨盤動脈造影 | |||||
| -5- | 感染症の検査 | ||||
| 一般細菌、原虫、真菌検査、免疫学的検査(梅毒血清学的検査、HBs抗原検査、HCV抗体検査、HTLV-I検査、HIV検査、風疹抗体、トキソプラズマ抗体、淋菌DNA、クラミジアDNA・抗体検査など)、血液像、生化学的検査 | |||||
| -6- | 放射線学的検査 | ||||
| 骨盤計測(入口面撮影、側面撮影)、子宮卵管造影、腎盂撮影、膀胱造影、骨盤血管造影、リンパ管造影、胎児造影、レノグラフィー、シンチグラフィー、骨・トルコ鞍・胸部・腹部単純撮影法、CT、MRI、RI検査 | |||||
| -7- | 内視鏡検査 | ||||
| コルポスコピー、子宮鏡、腹腔鏡、羊水鏡、膀胱鏡、直腸鏡 | |||||
| -8- | 妊娠の診断 | ||||
| 免疫学的妊娠反応、超音波検査(ドップラー法、断層法) | |||||
| -9- | 生化学的・免疫学的検査 | ||||
| i) | 腫瘍マーカーその他 | ||||
| ii) | 胎児胎盤機能検査 | ||||
| エストリオール(E3)、hPL、耐熱性アルカリフォスファターゼ(HASP)、leucine aminopeptidase(LAP)、cystine aminopeptidase(CAP) | |||||
| -10- | 超音波検査 | ||||
| i) | 婦人科的検査―骨盤腔内腫瘤(子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣腫瘍その他) | ||||
| ii) | 産科的検査 | ||||
| ドップラー法 断層法―胎嚢、頭殿長、児頭大横径、胞状奇胎、胎盤付着部位、多胎妊娠、胎児発育、胎児形態異常の診断、子宮頸管長、Biophysical Profile Score (BPS)、Amniotic Fluid Index (AFI) 血流ドップラー法 |
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| -11- | 出生前診断 | ||||
| 遺伝カウンセリング、羊水診断、羊水染色体分析、絨毛診断、遺伝子診断、先天代謝異常症、血液型不適合妊娠、胎児成熟度診断、胎児形態異常診断 | |||||
| -12- | 分娩監視法 | ||||
| 陣痛計測、胎児心拍数計測、血液ガス分析 | |||||
| d. | 治療法 | ||||
| 産婦人科治療のための注射、穿刺の適応ならびに内科的治療(輸血・輸液、薬剤の処方・与薬、食事療法などを含む)、外科的治療の適応を決定し、実施することができる。 | |||||
| -1- | 婦人科における薬物療法 | ||||
| ホルモン療法、漢方療法、感染症に対する化学療法、悪性腫瘍に対する化学療法など | |||||
| -2- | 婦人科手術療法 | ||||
| -3- | 放射線療法 | ||||
| -4- | その他の理学療法 | ||||
| 凍結療法、化学的焼灼法、高周波療法、レーザー療法など | |||||
| -5- | 産科における薬物療法 | ||||
| 子宮収縮剤、感染症に対する化学療法、妊産褥婦に対する薬物投与の問題点 | |||||
| -6- | 産科手術 | ||||
| -7- | 産婦人科麻酔 | ||||
| 婦人科麻酔、産科麻酔、新生児麻酔 | |||||
| -8- | 輸液・輸血療法 | ||||
| -9- | 救急処置 | ||||
| 婦人科救急、周産期救急(産科救急、新生児救急) | |||||
| e. | 保健指導 | ||||
| 小児期・思春期・成熟期・更年期・老年期の保健指導、母子保健指導 | |||||