3sep2004

日本産科婦人科学会専門医制度卒後研修目標
III. 生殖内分泌


改訂にあたって

 平成16年度より新医師卒後臨床研修制度が開始されるにあたり、専門医制度卒後研修目標の内容を更新すると共に、卒後研修5年間のうち初期2年間の卒後研修における研修目標を明示した。初期2年間のうち、産婦人科研修中に習得すべき項目をで、他科研修中に習得すべき項目をで、3年目以降で研修する項目をで示した。これらの複数の要素が混在している場合には、その見出し語、説明文を黒で示した。


** 目 次 **


  I. 総 論 

  II.  婦人科腫瘍
1. 腫瘍 2. 病理 3. 手術 4. 放射線療法 5. 化学療法 

  III. 生殖内分泌
1.内分泌 2. 不妊症 3. 不育症 

  IV. 産科・周産期 
1)知識  2)技能 3)態度

  V. 女性のヘルスケア
1. 感染症 2. 心身症 3. 更年期障害

  VI. 母性衛生と法規


III. 生殖内分泌

1. 内分泌

(一般目標)

各種ホルモンについての一般的概念を把握するとともに、加齢に伴う性機能の変化とその特質を理解し、内分泌疾患を鑑別できる能力を身につける。また内分泌疾患の病態生理の基本を理解し、妊孕性に対する配慮に基づいて、適切な診療とカウンセリングを行うのに必要な知識・技能・態度を身につける。

(行動目標)

1) 知識
内分泌機能は相互に密接な機能的関連を有するため、性機能に直接関連した内分泌臓器およびその標的臓器のみならず、他の内分泌器官についてもその構造と機能を理解する。また婦人科的内分泌異常に関連する症候について、それらの病因・分類・病態・診断の進め方を把握して具体的に述べることができる。
(1) 内分泌器官の構造・機能とホルモンの種類
a. 内分泌器官とホルモンの種類
-1- 視床下部:CRH、GHRH、GnRH、TRH、ソマトスタチン、ADH、オキシトシン
-2- 下垂体前葉:GH、TSH、ACTH、β-エンドルフィン、β-LPH、FSH、LH、PRL
-3- 甲状腺:T3、T4、カルシトニン
-4- 副甲状腺:PTH
-5- 膵島:インスリン、グルカゴン
-6- 副腎皮質:アルドステロン、DHEA、DHEA-S
-7- 副腎髄質:エピネフリン、ノルエピネフリン
-8- 卵巣:エストロゲン、プロゲステロン
-9- 精巣:テストステロン
-10- 腎臓:エリスロポイエチン、レニン、1,25(OH)2-ビタミン D3
-11- 胎盤:hCG、hPL、エストロゲン、プロゲステロン
b. ホルモン合成と分泌およびその調節
-1- ホルモンの生合成
-2- ホルモンの分泌調節(フィードバック機構、オートクリン、パラクリン、エンドクリン)
c. ホルモンの作用機構、輸送と代謝
-1- レセプター
-2- ステロイド結合蛋白
-3- 細胞内情報伝達系
d. その他
-1- プロスタグランジン
-2- インヒビンとアクチビン
-3- 成長因子
(2) 女性性機能の生理
a. 視床下部・下垂体・卵巣系
b. 卵巣周期と排卵
c. 血中ホルモン動態
d. 子宮内膜の周期性変化と月経
e. 妊娠の成立
f. 性器外周期
(3) 内分泌異常とその症候および疾患
a. 月経異常
-1- 周期
-2- 持続期間
-3-
-4- 随伴症状
月経困難症
その他
b. 原発性無月経
-1- pure gonadal dysgenesis
-2- mixed gonadal dysgenesis
-3- Turner症候群
-4- 真性半陰陽
-5- 精巣性女性化症
-6- 副腎性器症候群
-7- gonadotropin resistant ovary syndrome
-8- Kallmann症候群
-9- 処女膜閉鎖症
-10- 腟欠損症(Rokitansky-Kustner-Hauser症候群を含む)
-11- 子宮性無月経
c. 続発性無月経
-1- 子宮性無月経
-2- 神経性食欲不振症
-3- 体重減少性無月経
-4- ストレス性無月経
-5- 高プロラクチン血症
-6- Sheehan症候群
-7- Simmonds症候群
-8- Empty sella症候群
-9- 早発閉経
-10- gonadotropin resistant ovary syndrome
-11- 多嚢胞性卵巣症候群
d. 乳汁漏出症
-1- Chiari-Frommel症候群
-2- Argonz-del Castillo症候群
-3- Forbes-Albright症候群
-4- 下垂体腫瘍
-5- 薬剤性
-6- 原発性甲状腺機能低下症
e. 早発思春期
f. 早発閉経
g. 黄体機能不全
h. 多毛、男化徴候
-1- 副腎腫瘍
-2- 先天副腎過形成
-3- Cushing症候群
-4- 卵巣セルトリライディク細胞腫
-5- 卵巣ライディク細胞腫
-6- 卵巣ステロイド細胞腫瘍
-7- 多嚢胞性卵巣症候群
i. 肥満と痩せ
j. 機能性子宮出血
k. 卵巣欠落症候群
l. 月経前症候群
2) 技能
婦人科の一般的診療技能のほか、内分泌疾患の診断に必要な問診、視診、触診によって、家族歴(家系図を含む)、身長、体重、二次性徴の評価、体型(表現型)、外表奇形、外性器異常についての知見を認識し、さらに諸検査を実施して、その結果を解釈したうえで、適正な治療を行うことができる。
(1) 検査の実施とその解釈
a. 自ら実施し、結果を評価することができる。
-1- 基礎体温
-2- 腟細胞診(maturation index、smear index)
-3- 頸管粘液検査
-4- 超音波検査(含 卵胞発育観察)
b. できるだけ自ら経験し、その結果を評価することができる。
-1- Kuppermannテスト
-2- GnRH負荷試験
-3- TRH負荷試験
-4- デキサメサゾン負荷試験
-5- 子宮内膜日付診
-6- 腹腔鏡
-7- 子宮鏡
c. 検査の実施を指示し、結果を評価することができる。
-1- 血中ホルモン値測定
-2- 甲状腺機能検査
-3- トルコ鞍撮影、頭蓋部CTおよびMRIの読影
-4- 染色体検査
-5- 骨塩定量
(2) 治療
その原理、適応および実施法、副作用およびそれに対する処置について周知したうえで、適正な治療を行うことができる。
a. 排卵誘発法
-1- カウフマン療法
-2- 跳ね返り療法
-3- エストロゲン大量衝撃療法
-4- クロミフェン療法
-5- hCG療法
-6- hMG(FSH)-hCG療法
-7- ブロモクリプチン療法
-8- グルココルチコイド療法
-9- 卵巣楔状切除術
b. 排卵抑制法
-1- エストロゲン・ゲスターゲン合剤
-2- 低用量ピル
c. 黄体機能不全治療法
-1- 補充療法
-2- 刺激療法
d. 乳汁分泌抑制法・高プロラクチン血症治療法
-1- ブロモクリプチン療法
e. 子宮内膜症治療法
-1- 薬物療法
-2- 手術療法
f. 月経随伴症状治療法
g. 月経前症候群治療法
h. 卵巣過剰刺激症候群に対する治療
3) 態度
患者の特殊性を理解し、心理的側面を配慮して診療に当たり、とくに染色体異常、半陰陽、性器奇形などについては個人的、社会的配慮を示す。

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2. 不妊症

(一般目標)

不妊症一般についての概念を把握したうえで、不妊症についての検査、治療を系統的に実施し、かつ内視鏡を用いた診断・治療、マイクロサージェリーによる卵管形成術、体外受精・胚移植法等の先端医療の原理についても理解し、実施するのに必要な知識・技能・態度を身につける。

(行動目標)

1) 知識
多くの因子が互いに密接な関連を有して生ずる不妊症の診療を適切に行えるようにするため、その病因、分類、診断の進め方ならびに治療について把握し、具体的に述べることができる。
(1) 不妊症の定義
(2) 不妊症の分類
(3) 不妊因子の種類と診断
a. 排卵因子(婦人科内分泌の項を参照)
b. 卵管因子
-1- 卵管閉塞
-2- 卵管周囲癒着
-3- 卵管留症
-4- 子宮内膜症
-5- 骨盤炎症性疾患
c. 着床因子
-1- 黄体機能不全
-2- 子宮因子
-3- 免疫因子
d. 男性因子
-1- 性交障害
-2- 精子形成障害
-3- 精索静脈瘤
-4- 無精子症
-5- 乏精子症
-6- 精子路の異常
-7- 精管閉塞
e. 両性適合因子
-1- 免疫因子等
f. 機能性不妊
(4) 不妊因子の検査
(技能の項を参照)
(5) 不妊症の治療
a. 手術療法
-1- 子宮形成術
-2- 卵管形成術
-3- 癒着剥離術
b. 人工授精
-1- 精子凍結保存法
c. 生殖補助医療
-1- 体外受精・胚移植
-2- 配偶子卵管内移植
-3- 顕微授精
d. 不妊カウンセリング
-1- 不妊診断
-2- 治療法
-3- 精神的支援
2) 技能
婦人科の一般的診療技能のほか、不妊症の診断に必要な問診、視診、触診によって、家族歴、身長、体重、体型、外性器形態、基礎体温についての知見を認識し、さらに諸検査を実施して、その結果を解釈したうえで、適正な治療を行うことができる。
(1) 検査の実施とその解釈
a. 自ら実施し、結果を評価できる。
血中ホルモン値測定(排卵因子)
b. できるだけ自ら経験し、その結果を評価できる。
-1- 排卵因子
Kuppermannテスト
ゴナドトロピンテスト
プレマリン負荷テスト
GnRH負荷テスト
TRH負荷テスト
デキサメサゾン負荷テスト
卵胞発育モニタリング
基礎体温
腟細胞診
頸管粘液検査
トルコ鞍撮影、頭蓋部CT、MRI所見の読影
-2- 卵管因子
子宮卵管造影
卵管通気・通水法
-3- 子宮因子
子宮卵管造影
子宮鏡検査
-4- 男性因子
精液検査
-5- 両性適合因子
Huhnerテスト
Miller-Kurzrokテスト
-6- 機能性不妊
腹腔鏡
c. 検査レポートを理解し、診断に応用できる。
-1- 排卵因子
染色体検査
-2- 免疫因子
抗精子抗体
抗DNA抗体
HLAタイピング
(2) 治療
a. 自らその原理、適応および実施法、副作用およびそれに対する処置について具体的な知識を周知したうえで、その治療を実施することができる。
-1- 薬物療法
各種排卵誘発法(婦人科内分泌の項を参照)
-2- 人工授精
b. その原理、適応および実施法、副作用を理解し、必要な手技、処置を講ずることができる。
-1- 薬物療法
-2- 手術療法
腹腔鏡下癒着剥離術
子宮鏡下手術
-3- 人工授精
精子濃縮洗浄法
c. 副作用対策
卵巣過剰刺激症候群など
3) 態度
不妊症患者の心理的多様性を十分に理解し、倫理的側面にも十分留意して診療を行う。

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3. 不育症

(一般目標)

不育症の一般についての概念を把握したうえで、不育症についての検査、治療を系統的に実施するのに必要な知識・技能・態度を身につける。

(行動目標)

1) 知識
多くの因子が互いに密接な関連を有して生ずる不育症の診療を適切に行えるようにするため、その病因、分類、診断の進め方ならびに治療について把握し、具体的に述べることができる。
(1) 不育症の定義
(2) 不育症因子の種類と診断、治療
a. 遺伝因子
-1- 染色体異常
b. 免疫因子
c. 子宮因子
-1- 子宮奇形 子宮形成術、子宮鏡下手術
-2- 頸管無力症
d. 内分泌・代謝因子
2) 技能
婦人科の一般的診療技能のほか、不育症の診断に必要な問診、視診によって、家族歴、身長、体重、体型、基礎体温についての知見を認識し、さらに諸検査を実施して、その結果を解釈したうえで、適正な治療を行うことができる。
(1) 検査の実施とその解釈
a. 自ら実施し、結果を評価できる。
-1- 内分泌・代謝因子
血中ホルモン値測定
b. できるだけ自ら経験し、その結果を評価できる。
-1- 子宮因子
経腟超音波検査
子宮卵管造影
子宮鏡検査
c. 検査レポートを理解し、診断に応用できる。
-1- 遺伝因子
染色体検査
-2- 免疫因子
抗リン脂質抗体
抗核抗体
(2) 治療
a. その原理、適応および実施法、副作用およびそれに対する処置について具体的な知識を身につけ、かつ自らその治療を実施することができる。
-1- 手術療法
頸管縫縮術
子宮腔癒着剥離術
子宮形成術他
-2- 薬物療法
b. その原理、適応および実施法、副作用およびそれに対する処置について具体的に述べることができる。
-1- 抗リン脂質抗体に対する抗凝固療法
-2- 夫・第3者リンパ球接種免疫療法
3) 態度
患者の特殊性を理解し、心理的側面を配慮し、診療に当たる。


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