日本産科婦人科学会
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日本産科婦人科学会について

ご挨拶

2010年5月  

学会の自律性と社会的責任

社団法人日本産科婦人科学会
理事長 吉村 泰典
 

理事長 二期目の理事長職も残すところ一年となりました。この数年来、わが国の産婦人科医療は大変厳しい状況にありましたが、会員の先生方の孜孜としたご努力により、わが国の周産期医療提供体制も徐々に整備され、解決への曙光が見え始めてきています。国や地方自治体、そして社会も周産期医療の重要性を認識し、公的助成の拡大、ハイリスク妊娠分娩加算の対象拡大と評価のさらなる充実、医療従事者の待遇改善も図られるようになってきています。このような厳しい状況であるが故に、国民からの信頼に支えられた産婦人科医療の実現に向けて学会に要求されることは、高度な自律性であると思います。自律性とは、自らの行動について熟慮する能力、実行する能力であり、結果に対して責任を取ることです。学会は社会の信託を得るに足る団体でなくてはなりません。我々産婦人科医一人一人がmedical professionとしての誇りをもち、わが国の産科学および婦人科学の進歩、発展を図り、人類や社会の福祉に貢献できるような産婦人科医療を提供していかなければなりません。

 日本学術会議や日本専門医制度評価・認定機構では、医療の質を保証できる体制づくりとして専門医制度改革を挙げています。現在では専門医を育成する教育制度の評価や研修施設の認定は各学会に委ねられており、社会からは適切な外部評価を受けていないといった問題点も指摘されています。それぞれの専門医制度に医療全体から見た内形基準が存在しないため、国民が信頼を寄せる制度とはなっておらず、その結果、わが国の専門医そのものが明確な実効性をもたない、かつ実益もない単なる名称にとどまっている現状があります。

 本会はこのような状況認識より、産婦人科専門医の認定および研修についての内形基準の見直しを実施しました。3年以上の研修期間中に6カ月以上専門医が4名以上いる施設で、周産期医療を含む2つ以上の領域を研修することが義務づけられました。さらに、本会の学術講演会への参加、学会や研究会での発表、論文の発表などが専門医試験の受験資格に加えられました。また、研修指定病院でも論文発表が義務づけられるようになりました。研修医課程にある若い医師に学術研究の重要性と魅力を教育することが大切であり、社会の信頼に応えるための医療人を養成する専門医制度は極めて重要な教育制度であると思います。以前の専門医受験資格や研修指定病院認定要件に比べると大変厳しいものとなりましたが、会員の皆様には宜しくご理解の程お願い申し上げます。

 学会における学術や医療の活性化を図ることにより、産婦人科を専攻する若手医師の確保は最重要課題でありました。平成19年度より初期臨床研修医や医学生を対象としたサマースクールの開催、産婦人科を志す医学生に対する奨学金制度、若手産婦人科医師の海外派遣に対する資金援助の充実、教育委員会をはじめとする会員の先生方のご尽力により、産婦人科を専攻する医師の減少を食い止めることができました。またこれら若い先生方が自ら主体性をもって本会のあり方やわが国の産婦人科医療の将来を真摯に考えてくれていることは瞠目に値します。本会は、平成21年度には490名を超す新入会員を迎えることができ、この数は6年前の新研修制度が導入される前より70名以上も多い数であります。今後はこのような貴重な医療資源をどのように有効利用してゆくのか、そして地域偏在をどのように是正していくのかが大切になると思います。

 われわれが専攻する産婦人科学は次世代に向けた未来志向型の医療であり、同時に女性の生涯を通じてのその健康に奉仕する総合支援型医療として、その職域の拡大が叫ばれるようになってきています。わが国も超高齢化社会に突入し、疾病も治療から予防へとパラダイムシフトが起こってきています。国の「健康フロンティア戦略」においては、女性の健康力が柱の一つに位置づけられ、女性が生涯を通じて健康で明るく、充実した日々を自立して過ごせるように、女性の様々な健康問題を社会全体で総合的に支援する運動が展開されています。女性の健康寿命の延長は女性医学に従事する産婦人科医にとって大切なミッションでもあります。このような観点から、本会は4番目の専門委員会として女性ヘルスケア委員会を新設いたしました。今後は女性の健康を予防医療の一環として捉え、女性医学として発展させていくことが重要であると思います。

 近年、医療においてはパターナリズムとの訣別により、医師と患者の関係は大きな変貌を遂げ、診断や治療に関しては患者に対する充分な説明と同意が要求されるようになっています。患者の権利意識の向上により、患者の知る権利および自己決定という新しい概念に基づく医療の理念に変化がみられてきています。このような医師と患者の新しい関係は、量とアクセスを重視した医療から、質を重視した医療への変換を求めています。学術団体としての名に恥じない英知と良識を発揮し、社会の先導者たらん医療人を育成し、国民に対し安全で安心な質の高い産婦人科医療を提供するという重要な責務が本会には課せられています。そのために将来を見据えた重層的で複合的な施策を強力に展開し、若い医師を魅了するような学会運営を推進してゆきたいと考えております。今後とも皆様方のご指導、ご支援を切にお願い申し上げます。

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