日本産科婦人科学会
JAPANESEENGLISH
JSOG HOME
学術講演会 刊行物 専門医申請関連
会員専用 login
Home > 日本産科婦人科学会について > 挨拶

日本産科婦人科学会について

ご挨拶

平成25年7月9日  

現代日本における産婦人科医の役割

公益社団法人日本産科婦人科学会
理事長 小西 郁生

理事長 

 みなさま、こんにちは!
 さる6月22日に本会の定時社員総会が開催され、向後2年間の新しい執行部が発足いたしました。私自身はもう一期理事長を務めさせていただくこととなりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。この間も、産婦人科の関係する諸問題が非常に注目され、本会は全力をあげて対応しております。「わが国の喫緊の課題である少子化問題」への対応、「危機にある福島県の周産期医療」への支援、「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」の方向性、「子宮頸がん予防のHPVワクチン」普及のための課題克服、「先天性風しん症候群」の発症予防、等々です。さらに、卒後臨床研修の見直しでは、厚生労働省医道審議会にて「初期研修における産婦人科必修の緊急性と必然性」を強く主張しました。また厚生労働省「専門医の在り方に関する検討会」報告に基づき、本年から「新たな専門医制度」発足に向けての準備が開始されます。新制度では専門医認定は新たに設置される中立的な第三者機関によりなされますが、各学会のプロフェッショナル・オートノミーが基本とも明記されています。本会としては、第三者機関の運営に全面的に協力しながら、新たな制度の下でも若手医師の教育・認定試験等は、今後も本会が責任をもって行うことに変わりはありません。指導医の先生方には、若手医師に対する熱心なご指導を引き続きよろしくお願いいたします。
 さて、最近、この日本において産婦人科をもっと前面に押し出さないといけないと痛切に感じることが多く、本年から一層の努力を行っていきたいと思います。本年2月、医学部入試で受験生の面接を担当しましたが、受験生15名に将来展望を尋ねますと、ごく少数は研究者志向ですが、大多数は臨床医を目指しています。そのうち過半数は内科志向、残り数名は外科志向や救急、そして子どもの頃に大変お世話になったので小児科医になりたい、という方が必ずいます。ところが、最初から産婦人科医を目指している方は希であります。子宮の中にいた胎児期から出生時の記憶を持つ方はおらず、ご両親からも産婦人科医に大変お世話になったことは全く伝えられておりません。この現状を大きく変えていくためにあらゆる方策を講じたい、中学生や高校生が産婦人科学・医療の大切さを深く理解し、その中から産婦人科医になろうという若者が多く出てくるようにしたい、産婦人科から社会に向かっての情報発信を特段に増やして行きたい、と考えております。
 私たちが現時点でできることとして、医学部入学生にできるだけ早く、頭がフレッシュなうちに、産婦人科医療の素晴らしさ、その最先端を見せることが大切です。大学の新入生が誰でも受講できる全学共通科目の一つ「医学概論」全20コマがありますが、その1つに産婦人科から必ず手を上げて私自身が講義を担当しています。4月から「脳と心」「サイトカイン」「研究手法としての疫学」「膜蛋白の構造生物学」など基礎医学の講義が並ぶ中、6月に「子宮頸がん治療の進歩」の話をします。子宮頸がんは紀元前450年ヒポクラテスがすでに記載し、非常に古くから知られていましたが、19世紀終わり頃から根治的手術療法の開発が始まり、わが国の多数の先人がこれに深く関わり、さらに1950年代から細胞診による早期発見が開始され、1983年にHPVが同定され、ついに21世紀に入って予防ワクチンが開発された、という連綿とした歴史を語り、最後に、妊孕性温存の広汎性子宮頸部摘出術のビデオを見せると、会場から大きな拍手が沸いてきます。
 また人類における産婦人科の必然性を語ることも大事です。約1000万年前に起こったアフリカの地殻変動、熱帯雨林の後退と草原の広がりの中で、500万年前に私たちの祖先は二本足で立ち上がり活発な活動を開始しました。しかし、そのことにより骨盤は著しく狭小化し、難産、早産、未熟児出産、妊娠高血圧等々の問題が表面化し、女性の妊娠・分娩はきわめてリスクの高いものとなり、人類にとって産婦人科が必須の存在となったのです。メジャーといわれる内科、外科、産婦人科、小児科のうち、人類が絶えず感染症に脅かされたことから内科が、戦争で傷ついた人の治療法として外科が発達しましたが、産婦人科と小児科はその進化そのものに内在するリスクに対応する臨床医学として発達してきたことがわかります。日本では私たちのたゆまぬ努力により妊産婦死亡率や周産期死亡率が世界でも類を見ないほど低くなったために「安全神話」が形成されるまでになりました。今ここで、私たちは日本の産婦人科医療のレベルの高さとともに内在するリスクについても絶えず広報していくことが大切です。
 安倍総理による新しい政府が誕生し、改めてわが国の少子化問題に正面から立ち向かおうという機運が高まっています。少子化が現在のままで推移しますと、2055年にはわが国の人口が9000万人を割り込み、65歳以上の高齢者が半数を占める国となるといわれています。そのような中で、吉村泰典前理事長が内閣府に少子化担当の参与として招かれたことはきわめて画期的といえます。わが国の将来を考えますと、今、この少子化傾向に歯止めをかけることは非常に重要なテーマであり、ここで産婦人科が一肌脱いで頑張る必要があります。女性のライフスタイルが変化し晩婚化・晩産化が進行する中で、また、過剰なストレス・喫煙・ダイエットにより、20~30歳代の若い女性の健康がとても心配な状況に陥っています。毎月の月経の繰り返し自体が子宮内膜症や子宮筋腫の増加・悪化をもたらし、また子宮頸がんの若年化・増加、無月経、骨粗しょう症、内膜がんの増加につながっています。今、産婦人科医が若い女性のヘルスケアを積極的に広報し、産婦人科医がかかりつけ医となって、その予防や治療の機会を大幅に増やすことがとても大切です。本会は少子化問題に対応する産婦人科医の役割を大きくアピールしていきたいと存じます。
 昨年から「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」が大きな注目を浴びましたが、アンジェリーナ・ジョリーさんの予防的乳房切除にもみられるように、これからはゲノム解析により、過剰なほどの遺伝子情報が得られる時代を迎えます。私たち産婦人科としては、このゲノム医学を大きく取り入れながら、新しい時代の産婦人科学・産婦人科医療を創造していかねばなりません。周産期医学、生殖医学のみならず、婦人科がんの診断・治療にもゲノム医学を大いに活用し患者さんごとの個別化治療を切り開いていく必要があります。日本産科婦人科学会の学術講演会では、この間、わが国の産婦人科の学術活動の急速な活性化を反映し、その参加者数がドラマチックに増加しています。産婦人科の学問と先端医療の進歩が患者さんの予後とQOLの向上のみならず、若い医学生や研修医に夢と希望を与え、次代の産婦人科医志向の高まりにもつながっていくものと確信いたしております。
 さて本会では、本年度から定款改定により特任理事を5名までお願いできることとなりました。そこで早速ですが、医療改革委員会の海野信也先生(女性が安心して出産できる体制づくり担当)、サマースクールなど若手育成委員会の齋藤 滋先生(若手産婦人科医のキャリア形成を促す担当)にご就任いただきました。また新たに、女性のヘルスケアの維持・向上を促す担当として種部恭子先生、産婦人科医のワーク・ライフバランス担当として南 佐和子先生、女性のがん検診とがん予防を促進する担当として宮城悦子先生にご就任いただき、国民に近いところで活発な広報活動をお願いすることとなりました。
 みなさまには今後とも、公益社団法人としての本会の諸活動にご協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

このページのトップへ

サイトマップこのサイトについて
© 公益社団法人 日本産科婦人科学会